研究概要 |
医療の進歩に伴い高齢化社会が訪れ,寝たきり老人の問題が大きな社会問題とされているが,骨粗しょう症も間接的な要因の一つである.骨粗しょう症は骨量の減少に基づくものであり,体液中ビタミンD(特にD_3)代謝物の消長と深く関連している.D_3は肝臓で25位に水酸化を受けて25-hydroxyvitamin D_3[25(OH)D_3]へ,ついで腎臓で1α位に水酸化を受けて活性型である1α,25-dihydroxyvitamin D_3[1,25(OH)_2D_3]に変換され,カルシウムの恒常性の維持等に寄与する.このようなD_3代謝物の体液中濃度を的確に把握することは,骨粗しょう症をはじめとする臨床診断,病態解析あるいは新薬の開発上極めて重要であり,数多くの方法が開発されているものの,簡便性,信頼性等に疑問が残されている.本研究は,この点を解決し優れた骨粗しょう症用臨床診断薬の開発を行わんとして,企画されたものである. 先に,約20工程を経て11位を結合部位とする抗1,25(OH)_2D_3抗体調製用免疫原の合成,それによるポリクローナル抗体の産生に成功している.今年度はその諸性質に検討を加え,力価,親和性,特異性に優れることを明らかとした.これとは別に,各々側鎖構造,ステロイド骨格に特異的な抗体2種をCNBr法により不溶化担体に固定化し,その溶出条件,特異性,回収率,耐久性等を吟味しimmunoaffinity chromatographyを確立した.さらに汎用されている牛胸腺を用いるradioreceptor assayの前処理に適用しその有用性を明らかとした.また,HPLCによる25(OH)D_3及び3-sulfate定量法の開発にも成功した.
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