研究概要 |
本課題の成果は以下のとおりである。 1.糖のモレキュラーインプリントにおいて、糖の有機溶媒への溶解性の低さに起因して、従来の方法が適用困難であることが明らかとなった。 2.そこで、ポリマー粒子表面に水(あるいは水系媒体)中で糖をホストモノマーとともに添加してインプリントを行う表面インプリント法を開発し、糖の3,4,および6位の水酸基を認識するインプリントポリマーを調製することに成功した。 3.2で得られたポリマーは高速液体クロマトグラフィーによる糖の認識を可能とし、さらに、バッチ法による吸着実験では、鋳型特異な吸着能を示す場合があることを明らかにした。 4.3までの検討を基に、さらに有効なモレキュラーインプリント法を開発した。すなわち、予めホストとなりうる分子をポリマー上にある程度の密度で配置し、その上に目的とする糖を吸着させてホストと相互作用させ、さらに余分なホスト分子を化学反応によって不活性なものに変換する手法である。 5.メタクリル酸をホストモノマーとして用い、エチレンジメタクリレートを架橋剤にして、メタノール溶媒中に修飾糖を添加したものを希釈剤として、ポリマーを調製した。このポリマーの重合終了後、溶媒であるメタノールを減圧留去した後、30分程度、約200度程度に全体を加熱したところ、糖に対する認識は加熱前に比べて約2.5倍程度に増加した。 これらのことから、旧来法のモレキュラーインプリント法では高い認識が得られなかった糖類に対して、表面インプリント法や、ポリマーを後処理(熱処理)する手法でより高い認識が得られることが示された。これらの操作は簡便であり、また、実用上問題のある試薬を用いない。従って、極めて実用性が高い方法であると考えられる。
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