研究概要 |
生体内にある内在性オピオイドペプチドは,ペプチド分解酵素によって分解されやすく,また,血液-脳関門を通過しにくいため,末梢投与では有効な生理活性を示すものが少ない.そこで,よりペプチド鎖が短く,(CH_2NH)結合を導入して,ペプチド分解酵素に対する抵抗性を増強させた新規ダイノルフィン誘導体を合成し、抗侵害作用,および学習・記憶障害に対する効果について検討し,以下の結果を得た. 1)ダイノルフィン誘導体(S-9:Tyr-D-Ala-Phe-Leu-Argψ(CH_2NH)Arg-NH_2)を皮下投与すると,投与後120分において酢酸ライジング数が有意に減少し,著明な抗侵害作用が認められた.また,S-9を側脳室内投与すると,投与後30分で有意に酢酸ライジング数が減少し,抗侵害作用が認められたが,この作用は投与後60分以降では消失した. 2)S-9による抗侵害作用は,μ-オピオイド受容体拮抗薬であるnaloxoneにより完全に拮抗されたが,κ-オピオイド受容体拮抗薬であるnor-binaltorphimineでは拮抗されなかった. 3)S-9には,dynorphin A-(1-13)により認められた,scopolamineにより誘発される学習・記憶障害を改善する作用は認められなかった. 4)なお,S-10(Tyr-D-Ala-Phe-Leuψ(CH_<>NH)Arg-Arg-NH_2)では,これらいずれの作用も認められなかった.
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