研究概要 |
α-フルオロプロリン構造に関しては,N端およびC端の保護基を選択することで,不安定ながらも構築できることが分った.また,ヒダントイン構造を含む配座固定型の含フッ素オリゴペプチド類の合成法の開発に成功した.更に,α-フルオログリシン含有のオリゴペプチド類の合成研究の過程で、適切に保護されたα-アミノ酸アミド誘導体の新たな合成法を開発した. 含フッ素マロン酸ジエステル誘導体の合成には成功したが,酵素法による光学活性モノエステル体合成の試みは好結果を与えず,早い段階で酵素を用いる方法には戦略的な問題があると判断された.したがって,ベンゾモルファンやサリドマイドに代表される,四級炭素部位がフッ素化された生理活性物質を合成するには至らなかった. 不斉フッ素化試薬として期待される5員環スルタムの光学分割に関しては,メントキシアセチル基を補助基としてジアステレオマ-へと変換する方法で,効率良く対応する光学活性体を得ることができた.これらの光学活性体スルタムのN-フルオロ体を用いてテトラロンやインダノン類の不斉フッ素化を行ったところ,不斉収率80%,化学収率80%の好結果を得た.また,この反応の含フッ素医薬品合成への応用を試みたところ,本不斉フッ素化法は実用性が高いことが実証された. そこで,より高い不斉誘起能が期待できる6員環スルタムの合成を考えた.o-トルエンスルホンアミドをアシル化後2当量のブチルリシウムで処理することにより,6員環に環化した不飽和スルタムを一挙に得る合成経路を開拓することができた.これを水素添加することで,当初予定した,かさ高さに大差(水素とt-ブチル基)がある2つの置換基が不斉中心に結合した,6員環スルタムを合成することができた.残念ながら,現在はこの段階での光学分割には成功していない.しかし,対応するN-フルオロ体は常法により容易に合成することができ,これを用いるフッ素化も進行することを突き止めている.
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