研究概要 |
市販の微少透析用プローブを直ちに腎臓、心臓等の実質臓器に用いるには多くの問題がある,そこで1)組織損傷を押さえるために、プローブの直径を市販のプローブの1/3以下にする。2)透析灌流液の流速を高め、速い反応を観察出来るようにする。そのため透析効率を上昇させる。3)拍動や呼吸性移動による組織障害を減らす。以上の目的に合致したファイバー型プローブを作製し、本プローブの有効性をin vitroおよびin vivoの系で検討を行った。 1)in vitroの実験:透析膜は外径220μm、内径190μmのキュプロファンファイバー(分子量cut off point 5,500)を選び、有効透析長を15mmとなるよう接続チューブを両端に挿入した。本プローブの透析効率は、市販のプローブの5〜10倍高率であるため、10μ1/minの速度で灌流出来るため、短時間のサンプル採取が可能となった。 2)in vivo実験:麻酔イヌおよびウサギの腎被膜除去後、プローブを腎の長軸方向に刺入し、2〜10μ1/minの流速で灌流した。腎虚血時には、腎間質中のアデノシンは3倍に、ヒポキサンチンは100倍増加した。そこで、アデノシン動態をより正確につかむため、adenosine deaminase阻害剤(EHNA)、adenosine kinase阻害剤(iodotubercidine)の注入実験を行った。Iodotubercidine処置下でアデノシンは5倍程度の増加のとどまったが、EHNAで60〜70倍の増加が認められた。このことから、腎細胞で産出されたアデノシンは主としてadenosine deaminareにより分解され、adenosine kinaseによるrephosphorylationの割合は少ないものと考えられる。また、ウサギ腎において、循環調節に重要な役割を持つ一酸化窒素(NO)およびNOの2ndメディエタ-であるcGMPの動態も検討した。腎間質中でNOとcGMPは連動した動きを示すことから、本プローブを用いることにより、腎循環調節におけるNOの役割を解明出来るものと考える。 しかし、本年度では腎臓のみで実験データを得ることが出来た。もう一つの目的である心臓への応用は本年度の実績をもとに平成8年度に行う予定である。
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