研究概要 |
前年度と同様にラットを用いて迷走神経、動静脈ならびに門脈を温存したまま胃を摘出し、Krebs-Ringer氏液を門脈→胃→静脈の経路で潅流した。胃から潅流液中に遊離したNAおよびAChは、それぞれに所定の前処理を施したのち、いずれも高速液体クロマトグラフィーを用いて電気化学的に測定した。 1。胃からのNA遊離に関与するカルシウムチャネル:電位依存性のカルシウムチャネルは開孔に必要な電位の閾値と不活性化の速度の違いからT,L,N,P,QおよびR型に分類されている。胃交感神経の電気刺激(2.5Hz,2msec,10mA,for10min)は外液カルシウムに依存したNA遊離を惹起した。このNA遊離はカルシウムチャネルの非選択的遮断薬cadmium(10^<-4>M)ならびにN型チャネルの選択的遮断薬ω-conotoxin GVIA(10^<-9>-10^<-8>M)の前処置によってのみ著名に、且つ用量依存的に抑制された。一方、他の型のチャネルの遮断薬(diltiazem,flunarizine,ω-agatoxin)、では変化しなかった。 2。胃からのACh遊離に及ぼすオピオイドペプチドの影響:迷走神経の電気刺激はACh遊離を惹起した。このACh遊離はμ受容体刺激薬β-endorphin(10^<-7>-3x10^<-7>M)によって抑制された。一方、δ受容体刺激薬leu-enkepharinならびにχ受容体刺激薬U-50488では変化しなかった。従って、モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬の副作用としての消化器症状は中枢作用に加えて、消化器への直接作用も大きく関与するといえる。 {まとめ}1)胃からのノルアドレナリン(NA)遊離に関与する電位依存性カルシウムチャネルはN型である。2)オピオイドペプチドはμ受容体の賦活を介して胃からのアセチルコリン(ACh)遊離を抑制する。
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