研究概要 |
嘔吐のモデル動物フェレットから摘出した腸管を用いた5-HT遊離実験において,5-HT_3受容体作動薬の2-メチル-5-HTは用量に依存して5-HT遊離を増加させた.また5-HT_4受容体作動薬の5-メトキシトリプタミン(5-MT)も2-メチル-5-HT同様,摘出腸管から5-HT遊離を増加させることを見出した.ラット摘出腸管を用いてもフェレット同様,2-メチル-5-HTならびに5-MTにより5-HT遊離上昇が認められた.この5-HT遊離の増加は5-HT_3拮抗薬のグラニセトロン同時灌流により抑制された.シスプラチンは腸管よりの5-HT遊離量を増加し,そのピークは嘔吐行動発現のピーク時間と一致した.このシスプラチンによる5-HT遊離量の増加はグラニセトロンの併用により有意に抑制された.また、水溶性で速効性のウアバインを用いてジギタリス誘起性嘔吐機序を検討した.ウアバインの用量に依存してフェレットは嘔吐を惹起し,グラニセトロンの前投与によりこの嘔吐が抑制された.摘出腸管標本においてウアバインは5-HT遊離量を濃度依存的に増加させ,この増加をグラニセトロンは抑制した.ウアバインの用量に依存して腹部求心性迷走神経活動は上昇し,グラニセトロンはこの上昇を抑制した.エンテロクロマフィン(EC)細胞からの5-HT遊離機序をさらに明らかにするために,マウス腸管陰窩標本を用いて細胞内カルシウム濃度の測定系を確立した.以上の結果よりEC細胞よりの5-HT遊離は,薬剤誘起性嘔吐行動と関連し,その機序にはEC細胞上または介在神経上の5-HT受容体サブタイプが関与していることが明らかとなった。フェレットより単離した陰窩標本を用いての検討が今後の課題である。
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