研究概要 |
骨粗鬆症の診断及び予防のために血中1,25-ジヒドロキシビタミンD(1,25(OH)_2D)濃度の測定は重要な意義を持つ。しかしながら、現在の測定法では、ニワトリあるいはウシ由来のVDRを使用していることによる1,25(OH)_2D以外の代謝物の影響や、ラジオアイソトープを用いることによる測定施設の限定といった問題がある。本研究は、より簡便で、安価な1,25(OH)_2D測定のために、ビオチン・アビジン法を応用したエンザイムレセプターアッセイ法の検討を行うものである。まず、血中1,25(OH)_2D_3濃度の高感度測定法を確立するために、リガンド結合活性が安定して見られるglutathione-S-transferaseとの融合タンパクとしてビタミンD受容体を大腸菌にて大量に発現させる系を確立した。また、その受容体を精製し、ラジオアイソトープを用いてリガンド結合能を測定したところ、ウシ乳腺を用いたアッセイ法とほぼ同等の検出感度を得ることができた。また、問題となる1,25(OH)_2D以外の代謝物の影響については、25(OH)D_3に関してわずかではあるがウシ乳腺を用いた場合よりも良好な結果が得られた。以上のことから、本法により得られたビタミンD受容体は、血中1,25(OH)_2D測定に有用であると考えられた。次に、エンザイムレセプターアッセイにおいてリガンド認識能を向上させるために必要な抗ヒトビタミンD受容体抗体の作成を行った。その結果、抗体価の高い1種類の抗体を得ることができた。しかしながら、本抗体は、ウエスタンブロット法ではビタミンD受容体を認識することができるが、リガンド結合に対する阻害効果を検討したところ、10分の1希釈で添加した場合にリガンド結合が有意に阻害された。このことから、エンザイムレセプターアッセイ系への応用は難しいと考え、現在新たな抗体の作成を行っている。また、ビオチン化1,25(OH)_2D_3の合成については、現在リガンド結合に影響しないビオチン導入部位の検討を行っている。
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