研究分担者 |
林 要喜知 長野県看護大学, 助教授 (70173044)
三木 直正 大阪大学, 医学部, 教授 (40094445)
植月 太一 大阪大学, たんぱく質研究所, 助手 (20260309)
谷浦 秀夫 大阪大学, たんぱく質研究所, 助手 (80263325)
新延 道夫 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教授 (80135748)
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研究概要 |
アデノウイルスベクターを利用して,分化ニューロンにAPPの遺伝子導入を行い,その過剰発現による病理学的変化を観察した.APP発現組換えアデノウイルスはコスミドベクターpAxCAwtのCAGプロモーターの下流にLacZあるいはヒト全長型APP695cDNAを挿入して作製した.これをアデノウイルスゲノム両端に共有結合した末端蛋白を保持したゲノムDNAとを293細胞に共導入して,相同組換えによりAPPを発現するアデノウイルスベクターを得た.細胞としてはマウスおよびヒトの胚性がん細胞をレチノイン酸処理を行って分化させたニューロンを用いた.対照としたβガラクトシダーゼをレポータとするアデノウイルスでは,ほぼ100%のニューロンが感染する条件を設定した.その条件でAPP695遺伝子をもつアデノウイルスをニューロンに導入したところ,APPの過剰発現と共に,変性する細胞が出現することが判明した.この変性は特にヒト胚性がん細胞由来のニューロンにおいて顕著に見られた.また,同じAPP発現ベクターをラット海馬に注入したところ,同様に変性を示すニューロンが,多数認められた.この変性はグリア細胞では見られず,ニューロンに特異的なものであった.これらのアデノウイルスベクターによる遺伝子導入モデル系を用いた研究により,APPの過剰発現に伴ってin vivoおよびin vitroにおいてニューロンの変性が短時間に起こることが示された.したがって,これらの系はアルツハイマー病における神経変性の分子機構や,その抑制機構を研究する上で有用であることが示された。
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