運動ニューロン特異的遺伝子を単離する目的で、マウス運動ニューロンと神経芽細胞腫とのハイブリッド細胞株NSC-19を用いてサブトラクションcDNAライブラリーを作成した。200クローンをスクリーニングして、3つのNSC-19に特異的に発現する遺伝子を単離した。ひとつはamyloid precusor like protein1、他の2つは未知の遺伝子であった。新規の遺伝子のひとつは胎生期の中枢神経系に強く発現しており、全長クローニングを行った結果、thrombospondin type1 domainを有する新規の分泌型当蛋白で、thrombospondin(TSP)ファミリーのひとつであることが判明した。in situハイブリダイゼーションによる検討では、終脳の一部、中脳から脊髄の神経蓋板、趾芽などにシグナルが見られた。中枢神経系での発現は終脳も含めて神経管背側領域に強く限局しており、神経管背側での重要な役割を有することが予想された。TSP type1 domainを有する蛋白で特に中枢神経系と関連しているものはthrombospondinの他、F-spondin、SCO-spondin、UNC-5が知られている。TSP type1 domainには細胞接着や神経突起の伸長などの機能が推定されており、この機能を通じて本遺伝子は神経管背側での器官形成や神経組織の発達に関与する可能性がある。運動ニューロンでの発現及び運動ニューロンとの相互作用についてはさらに解析を行う必要があると考えている。
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