本研究は、"しみ"などの色素沈着症に対する治療のために、色素細胞内のメラニン生成を抑制する外用新規物質を開発する事を目的とした。昨年中に開発した、メラニン生成抑制物質のスクリーニング系(昨年の報告書にて報告済み)を用いて、さまざまな天然物質について検討したところ、米抽出物中にメラニン生成抑制物質が存在することが示された。そこで、その物質の分離同定と作用機作の解明を進めた。 米粒を粉砕し、水に浸漬し、50度Cにて抽出する。得られた抽出液を加熱処理した後濾過する。この濾液をニバポレイタ-で濃縮し、セファデックスG-25カラムにて分画し、スクリーニング系にて抑制物質を含む画分をエバポレイタ-で濃縮した。この濃縮画分をKiesel GEL 60にてカラムクロマトを行い、抑制物質を含む画分を分画Aと名付けた。 B16マウス黒色腫の培養細胞において、画分Aは、細胞増殖や蛋白合成の低下をもたらすことなく、添加濃度依存性にチロジナーゼ活性の低下とメラニン生成抑制を示した。一方、試験管内でのチロジナーゼ反応は画分Aにより直接阻害を受けなかった。以上の結果から、画分Aには、細胞内チロジナーゼ合成を特異的に阻害する物質が含まれていると考えられる。 今後画Aに含まれる抑制物質の単離生成につとめ、化学構造の決定にまで持って行きたい。さらにはこの物質の色素増加症に対する外用剤としての実用化の可能性についても検討する。
|