研究概要 |
研究方法:マウスβ-細胞(β-TC,Min6,Rin)を用いて転写因子の活性とグルタチオン(GSH)によるレドックス制御を高血糖群(28mMグルコース)とコントロール(5.5mMグルコース)で比較した。 結果:前回β-TCの高血糖群ではコントロールの約50%にGSHが低下すること。その低下が合成酵素(γ-GCS)の発現低下によることを報告した。更にTNF-αなどサイトカインによるGSH合成の誘導が高血糖で認められないことを観察した。NF-κBはp65/p50サブユニットとIκBの複合体として細胞質に依存し、IκBが遊離してp65/p50がDNAのNF-κB結合部位に結合する。このNF-κB活性化に高血糖がどのような影響を及ぼすかを、ゲルシフトアッセイ、転写因子の遺伝子発現で検討した。IκBやp65,p50はautoregulationでNF-κBによって発現が制御されている。今回この発現がGSHによって負の制御を受けていることも観察できた。高血糖β-細胞では、特にIκBの発現が低下していた。次に高血糖β-TCでは細胞内活性酵素が上昇していること、TNF-αによってそれが増加することを観察した。これらの結果は、高血糖β-細胞において転写因子のレドックス制御の異常からサイトカインによる細胞障害性が引き起こされ易いことを示唆している。 β-TCやmin6,RINなどのβ-細胞株では、GSH濃度が他の細胞の1/5〜1/10に維持されている。このことは、活性酵素に対する防御ばかりでなく、サイトカインに対するレドックス制御が容易に行なわれる可能性を示唆している。現在そのGSH合成を更に低下させる目的でγ-GCS遺伝子のアンチセンスコドンを挿入したリボザイムをβ-TCに導入し、サイトカインによるβ-細胞機能刺激や細胞障害のレドックス制御について準備中である。更に細胞障害の防御の方法について検討をすすめている。
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