研究概要 |
1.移植腸管局所における血管内白血球の活性化に関する接着分子の動態. 【方法】経時的に屠殺し摘出したgraftをPLP固定後凍結切片上で免疫組織化学にてICAM-1,LFA-1についてのリンパ球、接着分子の検索を行った. 【結果】拒絶時にはClassII抗原,ICAM-1の早期過剰表出がみられCD4に対するCD8の増加が著明にみられた.免疫抑制剤投与下ではこれらの変化は抑制され対照群と同様な変化に留まった.また、血管内に接着し連銭形成を示す血管内白血球にはILA-1のみならずICAM-1表出も見られ血管内皮の活性化に対応する変化がおこるものと考えられた。 2.CL-HPLC法による組織過酸化脂質(PCOOH)測定法の開発とPCOOHの作用機序の検討. 【方法】障害小腸粘膜より脂質を抽出しTBA反応物質とCL-HPLC法にて粘膜内PCOOHを測定しPCOOH測定の有用性を検討する. 【結果】PCOOHはTBA反応物質よりもはるかに早期の変化を検知できき安定に測定できることがわかった。小腸ではTBA反応物質との比較でより早期,軽度の病変の検知が可能であった.また、LTB4阻害剤により白血球の遊走を阻止することにより粘膜障害は抑制されるがPCOOHは抑制されないことから、PCOOHは白血球の活性化を促す因子として障害のごく初期に作用することが示唆された。 【今後の展望】拒絶時早期には血管内皮が活性化しICAM-1などの接着分子を過剰表出し内皮に白血球が接着し、さらに血管内白血球活性化することにより、以降の反応を進めることが判明した.また,PCOOHの測定によりより早期の変化をとらえることができるようになり拒絶時の判定に有用であることが示された.しかし、PCOOHは組織障害の指標としてよりもむしろ炎症反応の重要なmediatorとして作用している可能性がしめされた。今後は脂質過酸化物と血管内皮および血管内白血球の活性化との関連について研究を進める必要がある。
|