研究概要 |
われわれは磁気共鳴法の種々の技法を実用化して、脳神経疾患の代謝・機能解析を行ってきたが、空間分解能の制限や、対象が液体系のみであるという問題点があった。そのため、実験用超高磁場装置に強力な傾斜磁場を組み込んで、固相系を含む生体からμ cmオーダーのMRI/S測定が可能となる方法の開発と実用化を計画した。昨年度に引き続き基礎的検討と動物実験を行い、実用化の可能性を検討した。まず、(1)動物実験用核磁気共鳴装置(Varian社,Unity INOVA 300SWB、300MHz, 15cm口径)に有効サイズ24mm,200Gauss/cm、立ち上がり時間15μ secの傾斜磁場装置を組み込む試みを行った。しかし、本体の装置に大きな問題点(傾斜磁場の不安定)が見つかり、その修復に多大な時間を要して現在も完成を見ていない。(2)やむを得ず、その間に別の装置にて(Bruker AMX300WB)、測定パルス系列の開発と実用化の可能性の検討を行った。液体ファントムでは、高速測定法を用いて、数十μ cmの画素子の分解能のMRIを作成する目処が得られた。次に、固相系のMRIでは種々の測定方法を検討してノウハウの蓄積を行っている段階であり、現在までに十分な画像が得られてない。これには、実験用装置本体の未調整が大きく影響している。現在この問題に関して製造メーカーの責任下において調整中であり、完成され次第ファントムを含めた測定を開始する予定である。今回の研究では、肝心の磁気共鳴装置自体の未完成さというメーカーの問題点が最大の原因で、その上この種の研究開発を行うには期限が余りにも短すぎたため十分な結果を得ることができなかった。しかし、本法は従来にない高分解能と測定不可能であった部分の画像化もできる点で非常に有用であり、臨床応用も可能と考えられ、今後も更なる研究発展を続ける価値の高い研究である。
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