研究概要 |
口腔扁平上皮癌症例におけるp130遺伝子の変化をみる前段階として比較対照を行なうp53遺伝子異常について検討した。その結果、p53蛋白は正常口腔粘膜上皮にはみられず、口腔癌症例の約半数で過剰発現していた。さらにp53のmutationについてPCR-SSCP法を用いて検索したところ、mutationは78.9%の症例で認められた。口腔扁平上皮癌115例に対してMIB-1,RB,p53,nm23,cyclnD1,bc1-2について免疫組織学的に検索し、臨床病理所見との関係について検討した。その結果転移の有無と,RB,p53,nm23,bc1-2の発現が、病理組織学的な湿潤様式とRB,bc1-2の発現が相関していることが判明した。p130の類似遺伝子であるRBが発現に口腔癌の臨床病理所見と強く相関したことはp130が口腔癌の分子診断法への応用の可能性示唆させるものであった。E-カドヘリンの発現についても検索したところ臨床的にstageが高く、病理組織学的に頸部リンパ節に転移のみられなかった症例ではE-カドヘリンの発現は顕著ではなかった。口腔扁平上皮癌細胞株については従来より当教室にある細胞株に加えて口底癌、舌癌より各々培養癌細胞を得、現在1年以上保持し50代以上のpassageを行っており、これらの細胞の生物学的性状を明らかにし、本実験に使用する予定である。
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