研究概要 |
口腔扁平上皮癌細胞においてp130がRb,p107と比較し、どのような機能的な差異があるのか、癌化とどのように関わるかについて検討した。 8つの口腔細胞癌株におけるRbファミリー蛋白の発現を調べたところ、いずれの細胞株もRbは高度にリン酸化されていた。p107,p130のリン酸化のパターンは、p107が高リン酸化されている細胞はp130が低リン酸化の傾向にあり、逆にp107が低リン酸化されている細胞ではp130が高リン酸化の傾向にあった。次にRbファミリーのリン酸化の制御因子であるG1サイクリンの発現を検討した。p107がリン酸化されている細胞ではサイクリンD1が高発現しており、p130が高度にリン酸化されている細胞ではサイクリンD2の発現が高かった。サイクリンD3,Eは全ての細胞株に認められ、後者は特にp130が高度にリン酸化されている細胞で高い発現がみられた。以上より、p130,p170の発現とそのリン酸化はサイクリンD1,D2,Eに制御されている可能性が示唆された。 正常扁平上皮由来の細胞株(HaCaT)にTGFBを添加し、その増殖活性を抑制したところp130の高リン酸化のバンドの消失がみられたが、口腔癌細胞株では同様の処置を施してもリン酸化のパターンの明らかな変化は認められなかった。このことから口腔癌においてP130の制御に何らの異常が生じていることが示唆された。 32例の口腔扁平上皮癌症例より得られた癌組織を対象に、抗RBならびに抗p130抗体を用いて免疫染色を行なった。Rb陽性症例、p130陽性症例ともに高分化型の症例に多くみられ、これよりRb遺伝子、p130遺伝子が高分化型扁平上皮癌に出現することが示唆された。
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