研究概要 |
ラット肝臓より精製したラノステロール合成酵素をリジルエンドペプチダーゼで消化し、11本のペプチドのアミノ酸配列の情報を得た。これらの配列と、他のグループによって報告されている2本のペプチドのアミノ酸配列の情報を基に、オリゴDNAを合成し、PCRを駆使することにより本酵素遺伝子のcDNAクローニングに成功した。得られたcDNAは2,669bpからなり、2,199bpのORF(推定分子量83kDa)を持っていた。このcDNAを酵母の発現ベクターに組み込み、ラノステロール合成酵素遺伝子を欠損した酵母に導入した。このcDNAが組み込まれたラノステロール合成酵素遺伝子欠損酵母は、エルゴステロールを含まない合成最小培地で生育できるようになり、得られたcDNAはラノステロール合成酵素遺伝子欠損を補完した。また、酵母の野生株に導入し形質転換した野生株のホモジェネートに通常の5倍のラノステロール合成酵素を検出した。以上のことから、得られたクローンはラノステロール合成酵素をコードしている遺伝子であると断定した。医薬品の開発においてはヒトの酵素を標的としたほうが好ましい、と考え、次にヒトのラノステロール合成酵素のクローニングを行った。ラットのラノステロール合成酵素のアミノ酸配列と今までに報告されているオキシドスクアレン閉環酵素のアミノ酸配列を比較すると非常に相同性の高い領域が複数個所存在しており、これらの領域を利用してPCR法でクローニングを行った。最終的に、3′及び5′RACE法により全長に対応する塩基配列を得た。得られた塩基配列からヒト由来ラノステロール合成酵素のcDNAは、2,196bpのORFをもち83kDaに相当する723個のアミノ酸配列をコードしていた。
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