研究概要 |
1.大腸菌のスペルミジン取り込み系の基質(スペルミジン)結合蛋白質(PotD)のスペルミジン結合部位は、そのX線結晶構造解析並びに変異PotDの活性測定より同定された。このPotDのスペルミジン結合部位とホモロジーのある部分をNMDA受容体上で探索したところ、N-末端側とM3とM4の膜貫通領域の間の細胞表面に露出しているペプチド部分で相同性が認められた。PotDのスペルミジン結合には、酸性アミノ酸残基が最も強く関与していたので、相同性の認められた領域の酸性アミノ酸残基を中性アミノ酸残基に置換して、NMDA受容体活性を測定した。NMDA受容体活性発現にはグルタミン酸、グリシンが必須であり、ポリアミン、特にスペルミンは受容体活性を二面的に調節している。すなわち、脱分極時では活性を促進し、過分極時では活性を阻害する。この活性促進にはGlu342、Asn616、Asp669が関与し、阻害にはAsn616、Glu621、Asp669が関与していた。スペルミンは脱分極時と過分極時で結合部位が変わり、NMDA受容体活性を調節していることが示唆された。 2.種々のビスエチルテトラアミン及びビスエチルペンタアミンを合成し、これらポリアミン誘導体のNMDA受容体活性に対する効果を検討したところ、BE4444(1,19-ビスエチルアミノ-5,10,15-トリアザノナデカン)が過分極時で最も強い阻害活性を有していた。しかし、BE4444は脱分極時の促進活性をほとんど有していなかった。 3.更に強力なポリアミンアンタゴニストを探索したところ、N^1ーダンシルスペルミン及びN^1-(n-オクタンスルフォニル)スペルミンは1μMでほぼ100%活性を阻害した。これら化合物をリ-ド化合物として、ポリアミン誘導体の医薬品としての開発を目指す。
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