研究概要 |
5種の銅錯塩反応染料C.I.Reactive Red 23,C.I.Reactive Violet 5,ビニルスルホン系1:1(Blue-Cu),モノクロロトリアジン系1:1(Blue-1Cu)、1:2(Blue-2Cu)銅錯塩アゾ染料で染色したセルロースフィルム及び綿布をヒスチジン(His)水溶液に浸漬し、フィルムへのHisの吸着量を紫外吸収スペクトルより、また、綿布への吸着をHisの銅への配位により生ずる主波長のシフトより測定した。その結果、フィルムでは、Blue-2Cuを除いて銅が引き抜かれるまでは、銅にHisが配位したためと推定される付加的吸着が観測された。Blue-2Cuは銅が引き抜かれる速度が非常に速いため、付加的吸着は見られなかった。フィルムを長時間浸漬し、銅が引き抜かれると、吸着量は未染色のものと同じまで減少した。Violet5の吸着量はRed23、Blue-Cuに比べると少なかった。次に、綿布では、フィルムに比べて速やかな吸着が観測された。Blue-1Cu、Blue-2CuはHisの吸着が速く、色相の変化も少なかった。色相変化の速度はBlue-2Cu Blue-1Cu≫Blue-Cu【approximately equal】Violet5≫Red23の順であった。更に、綿布をHis溶液に短時間浸漬後、60℃RH100%の条件で熱処理を行うと、長時間浸漬した時と同じ色相変化が観察され、熱処理は、長時間浸漬と同じ効果をもたらすことがわかった。色相変化はHis溶液のpH5.6,7.6,9.0では、pHの高い方が速く、大きかった。次に、Blue-Cu,Blue-2Cuの布を未処理、水、His溶液に浸漬、浸漬後水洗いした状態で、露光試験を行った。未処理、水に浸漬したものに比べ、His溶液に浸漬したものは、非常に大きな退色を示した。水洗いして、Hisを落としたものは、退色が抑制された。これらの結果を踏まえて、JISの汗・光試験法を考えると、JISのHisを含む人工汗液に30分浸漬する方法では、反応染料染色物の試験法としてはあまりに穏やか過ぎるし、銅錯塩染色物へのHisの効果を調べているのに過ぎないこと
|