研究概要 |
本研究では,絞り,フォーカス,シャッタースピード,視点や視線といったカメラパラメータを規則的に変化させながら撮った多数枚の画像(多重画像)を統合することにより,通常のカメラでは得られなかったタイプの情報を持った画像を高精度に生成するカメラシステムの開発を目的としている.本研究で得られた成果は以下のとおりである. 1.絞り,フォーカス,ズ-ムの値を計算機から正確に制御できる電動レンズを設計・試作し,多重絞り画像,多重フォーカス画像,多重ズ-ム画像の撮影ができるカメラシステムを開発した. 2.上記のカメラシステムを用いることにより,多重絞り画像からの高精度カラー情報の抽出,多重フォーカス画像からの3次元距離情報の抽出が実現できることを実証した. 3.商用の3CCDカラービデオカメラを改造し,フォーカスの異なる3枚の白黒画像を同時に撮影できる多重フォーカスカメラを設計,試作した. 4.多重フォーカスカメラで撮影された3枚の多重フォーカス画像から高精度に明度エッジを抽出し,各エッジ点における3次元距離を計算するアルゴリズムを考案し,実験によってその有効性を実証した. 5.多重フォーカスカメラのレンズ前面に構造化瞳を設け,得られた多重フォーカス画像から3次元距離画像と,ぼけのない完全合焦画像を求めるアルゴリズムを考案し,実験によってその有効性を実証した. 6.視点(投影中心)を固定したまま,視線方向を変化させることができる首振りカメラ(Appearance Sphere(APS)カメラ)を設計,試作した. 7.APSカメラを用いて,全方位全天空の視野を持つパノラマ画像を合成するアルゴリズムおよび,パノラマ画像からある視線方向の画像を高速に生成するアルゴリズムを考案し,視線の移動に伴ってスムーズに変化する動画像の生成が実現できることを示した. 本研究で開発した多重フォーカスカメラおよびAPSカメラは,十分実用性を持っていることが確認されており,今後機会があれば実用化に向けて企業との共同研究を進める予定である。
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