研究概要 |
本研究において得られた結果は研究発表に示したように一部発表されているが、研究初年度でもあり、すべてが完結した内容にはなっていない。しかしながら、下水汚泥からの重金属回収技術についてはかなりの研究成果が得られている。 下水汚泥からの重金属の溶出において、MnとCuは汚泥滞留時間を変化させた全てのRunにおいて溶出が起こった。Mnでは各Runの溶出量に差がほとんどみられなかったが、Cuでは各Runの溶出量に差が見られ、汚泥滞留時間が長いRun程溶出が起こった。このことからCuの溶出はMnより汚泥滞留時間の影響を受けやすいと考えられる。このとき、溶出実験前における形態毎の金属含有量は、Cuでは硫化物態、Mnでは有機結合態と炭酸塩態、Cuでは硫化物態が多くなった。溶出実験後における金属含有量はイオン交換態を除いた全ての形態で減少が見られた。イオン交換態の増加は他の形態から溶出した金属が移行したと考えられる。含有量の減少は、Cuでは硫化物態、Mnでは有機結合態及び炭酸塩態においてかなり見られた。さらに、Mnの有機結合態と炭酸塩態では各Runによってわずかではあるが含有量の変化に差が見られた。しかし、他の形態では各Runの含有量には余り差が見られなかった。 汚泥滞留時間に対する各金属の平均溶出率は、定常状態における溶出量の平均値を汚泥中の金属含有量で除したものであるが、MnとNiが最も高く、Zn,Cd,Cu,Cr,Pbの順に低下がみられた。Pb,Crにおいては溶出がほとんど起こらなかった。また、Znは全てのRunで70%の溶出率を示しており、滞留時間における溶出率の差はほとんど見られなかった。 以上の結果から、汚泥滞留時間が長いほど金属の溶出率が高くなることが明らかになった。しかし、滞留時間1.5日の溶出率は3.0日の溶出率に近いことから、汚泥滞留時間は1.5日が最適であることがわかった。
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