研究概要 |
これまでに開発した分子内アルドール型8員環閉環反応を基盤として、タクスシンおよびタキソールの不斉全合成を達成した。前者については、既に見い出しているジアステレオ選択的共役付加を利用して三環性環化前駆体を光学活性体として合成し、B,C核間位の△^<3,8>-二重結合のシクロプロパン化を経て対応するシクロプロピルケトンを合成し、その還元的開裂により19-メチル基を導入した。さらに、5位水酸基の立体選択的導入および4位のメチレン化を経て、タクスシンの不斉全合成に成功した。 最も重要且つ興味深い合成標的であるタキソールの不斉全合成は以下の経路で行った。すなわち、Cフラグメントとして3-ブロモシクロヘキサジエン-2-カルバセタールを用い、これまでに開発した光学活性Aフラグメントとのカップリングにより、環化前駆体を合成し、その環化により所定の三環性中間体を得た。次いで、C環のジエン部位の一重項酸酸化を経て4-及び7-位に共にβ-側から水酸基を導入し、1.2-及び7.9-ジオール部位を適切に保護した後、△^<3,8>-二重結合のシクロプロパン化及び4-位水酸基の酸化によりシクロプロピルケトンとし、その開環により19-メチル基を導入して重要合成中間体を合成した。さらに、適切な官能基導入を行い、D環構築を経てタキソールの不斉全合成を完了した。一方、タキシニンの全合成に関しては、Cフラグメントとしてアニソールを含む三環性中間体を合成し、適切な官能基変換により、C環エノンを含む三環性化合物を得、このタキシニンへの変換について、現在、検討を加えている。
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