研究概要 |
我々はさらにこのSH3ドメインに結合する蛋白質をアフィニテイークロマトグラフィーで牛脳より精製した。牛脳中の主なAsh/Grb2H3ドメイン結合蛋白質は分子量180kDa,150kDa,110kDa,100kDa,65kDa及び55kDaであった。これらの蛋白質の部分アミノ酸配列を決めた。これらの蛋白質の内、150kDaと65kDaの蛋白質は未知であった。その他の蛋白質は180kDaがSos、110kDaがc-Cbl,100kDaがdynaminで55kDaがtubulinであった。150kDa及び65kDaの蛋白質に関してはそのcDNAをクローニングした。150kDaの蛋白質はその後、synaptojaninのアイソフォームであることが分かった。65kDaの蛋白質は構造上、Wiskott-Aldrich syndrome protein(WASP)と類似性が高く、神経系に多く発現していたことからN-WASPと名づけた。N-WASPはAsh/Grb2と複合体を形成しており、受容体の刺激でチロシンキナーゼが活性化すると受容体へ移行する。するとCdc42の存在下で活性化され、アクチン線維を切断し、barbeendを露出する。N-WASPはプロファリンとも結合し、複合体を形成していて、その場でアクチンの重合が引き起こされる。その結果フィロポジイアが形成される。このようなN-WASPはフィロポジア形成に必須であることを明らかにした。
|