X線結晶解析による立体構造解析では、最低限、単結晶からのX線回折強度を測定する必要がある。近年これを、2次元検出器であるイメージングプレートを用いた写真法によって行っている。本研究では、その画像データの高圧縮方法について検討し、開発を行う。これとともに大容量ファイルの転送方式についても調査を行う。 研究開発は、(1)ファイル読み込み、圧縮アルゴリズムのプログラミング化、(2)実際の回折データ処理とその評価、(3)画像フーリエ変換の係数成分の保存、(4)逆変換、(5)復元データの回折データ処理と評価、に計画に従った。このうち、(3)についてはUNIX既存の方法を用いる。まず、放射光施設あるいは実験室でのイメージングプレート回折画像のデータ書き込みフォーマットの分析を行った。これを効率よく読み込むためのアルゴリズムの開発を行い、そのためのコンピュータハードウェア(メモリーおよびディスク)の改良を行った。得られた画像データを基に結晶解析に必要な構造因子の見積もり、回折データの評価を、実際の蛋白質結晶解析を行いながら評価した。用いた蛋白質結晶は、トリプトファン合成酵素複合体、超分子集合体であるプロテアソーム、サリチル酸水酸化酵素などである。これらの処理と共にフーリエ、あるいはウォルッシュ・アダマ-ル変換アルゴリズムをコーディングしプログラム化する事により実際の画像データ変換に用いた。現在、係数圧縮を効率よく行うためのパラメータの最適化を行っている。また、遠隔地での大量画像データ取得によるデータ伝送についても実験を行った。これには通常用いられるイーサネットケーブルではなく、光ファイバーケーブルを用いることで高速伝送を実現した。
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