エバネッセント光を利用した分子間力3次元測定可能な光学顕微鏡の試作

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07558100
• 研究種目: 試験研究(B)
• 研究機関: 慶応義塾大学
• 研究代表者: 宮田 英威 慶應義塾大学, 理工学部, 専任講師 (90229865)
• 研究分担者: 伊藤 博康 浜松ホトニクス(株), 筑波研究所, 研究員
• キーワード: エバネッセント / イメージング / 光ピンセット / 分子間力

研究概要

本研究の目的:エバネッセント光は光が固体-液体界面で全反射したとき界面付近の液体中に発生する波長程度の厚みの空間に局在する光である。エバネッセント光を蛍光顕微鏡の励起光源として用いれば界面にある蛍光分子のみを励起するのでバルクの蛍光分子由来の背景蛍光を大幅に抑えられる。一方界面付近にある小物体にエバネッセント光があたれば一部が散乱される。散乱強度も界面と物体との距離に強く依存するのでその測定から物体のz方向位置が分かる。我々が作ろうとしている装置の特色は、エバネッセント光で得られる情報に蛍光と散乱光の両方が含まれていることに着目、光学顕微鏡でこれら二つを結合し、更に光ピンセット法をも組み合わせて3次元微小力測定装置とするところにある。なお、エバネッセント光発生法を工夫し、それが顕微鏡本来のイメージング法(微分干渉法や位相差法)のじゃまにならないようにするのも特色である。
研究経過と結果:(1)イメージング:新しいエバネッセント励起法(エバネッセント光発生用プリズムを光路からずらしカバーガラス内を導波させる方法)によってアクチン重合のイメージングを実現できた。今のところイメージの質は従来型と変わらないが、従来型では不可能だった位相差像観察が可能になった。また、ミオシンフィラメントに蛍光性ATPを低濃度で与えたところ、ミオシンと相互作用するATPの蛍光像と散乱光によるミオシンフィラメント像の特徴が一致したので両者の同時観察が可能になったと判断した(2)力測定システム:立ち上げが遅れているが、光ピンセットはずでに使用実績もあり原理的に困難はない。また、上に述べたように新しいエバネッセント光発生法は既にできているのでできるだけ早い機会に両者を組み合わせて実験を開始する。

研究成果

• [文献書誌] Miyata,H.,et al.,: "Mechanical measurements of single actomyosin motor force." Biophys.J.68. 286s-290s (1995)
• [文献書誌] Sase,I.,et.al.,: "Realtime imaging of single fluorophores on moving actin with an ordinary epifluorescence microscope." Biophys.J.69. 323-328 (1995)
• [文献書誌] Sase,I.,et al.,: "Regulatory mechanism of acrosome reaction revealed by multiview microscopy of single starfish sperm." J.Cell Biol.131. 963-973 (1995)
• [文献書誌] Suzuki,N.,et al.: "Preparation of bead-tailed F-actin: Estimation of the torque component of the sliding force in an in vitro motility assay." Biophys.J.70. 401-408 (1995)
• [文献書誌] Nishizaka,T.,et al.: "Unbinding force of a single motor molecule of muscle measured using optiocal tweezers." Nature. 377. 251-254 (1995)
• [文献書誌] Miyata,H.,et al.: "Strength and life time of actin-skeletal muscle α-actinin bonds studied by an optical trapping technique." B.B.A.(in press).