本研究の目的は、近接場顕微鏡の開発を推進し、水溶液中の細胞膜や培養細胞を、通常の光学顕微鏡の分解能より5〜10倍の分解能で観察することを可能にすることである。通常の光学顕微鏡(位相差、微分干渉、蛍光が使える必要がある)の上に組み立てることによって、光学顕微鏡で見たい部分を捜し、その部分を近接場顕微鏡でズ-ムアップするというような使い方をできるようにすることを目指した。本年度は、装置の試験を、色々な細胞膜のプレパレーションや培養細胞について行い、装置を改善していった。 また、蛍光観察用のプローブと散乱光測定用のプローブを別々に開発した。蛍光観察では、分解能を犠牲にしても、信号強度を高める工夫をした。散乱光の観察では、プローブの開口径を十分小さくし、水中で40nm程度の空間分解能を達成した。これらを使い分けつつ、両方をある程度同時に実現できるプローブの開発もおこなった。 装置の実用試験の試料として、生細胞や固定培養細胞(蛍光抗体、蛍光ビーズなどで細胞膜上のレセプターや膜骨格/細胞骨格を標識する)、細胞質側を露出させた細胞膜標品、赤血球膜などを用いた。また、多種の蛍光色素を用いて実験した。このような試料については、すべて、水中で光学顕微鏡の分解能を3〜10倍上回る結果が得られるようになった。 今後の問題としては、信号/雑音比のさらなる改善、分解能をさらに3倍上昇させること、画像を取得するのに必要な時間を、現在の10〜20分から1分程度にまで縮めること、などが挙げられる。
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