研究課題
我々はランダムプライマーを用いてDifferential Display法を改良し、効率化及び簡便化をはかってきた。これらの方法を用いて神経の発生、分化、細胞死に関する遺伝子のスクリーニングを行った結果、上頚神経節で神経成長因子を枯渇させたときに起こるプログラム細胞死の系では新規蛋白DP5を、ジャービルの一過性虚血後の細胞死を起こす系ではセリンプロテアーゼ阻害剤のSPI-3を、embryonal carcinoma P19 cellをレチノイ酸で神経細胞に分化させる系では、新規の膜蛋白LIG-1の遺伝子を単離してきた。その中で、LIG-1は1091のアミノ酸よりなり、細胞外は794個のアミノ酸からなり15個のロイシンリッチリピート構造、3個の免疫グロブリン様のドメインと7箇所の糖鎖結合可能部位を有していた。また、ノーザンブロット解析によりLIG-1は主に脳に発現していることが明らかとなった。さらに、in situハイブリダイゼーション法により、詳しい細胞内局在を調べると、Bergmann glia細胞や嗅球の神経線維層など限られた領域に限局して発現していた。これらの特徴から考えて、LIG-1はある種のグリア細胞において接着分子や受容体として機能し、神経、グリア細胞の分化、発達、神経細胞の機能維持などの働きを有しているのではないかと考えられた。以上の結果より我々が改良したランダムプライマーのみを用いるDifferential Display法は微量のmRNAを検出するのに最適な方法であると考えた。
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