研究課題/領域番号 |
07558106
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研究種目 |
試験研究(B)
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
永津 俊治 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所(神経化学), 教授 (40064802)
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研究分担者 |
水口 智子 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所(神経化学), 研究員 (50247665)
大江 端江 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所(神経化学), 研究員 (10247661)
澤田 浩秀 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所(神経化学), 研究員 (30247663)
小林 和人 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所(神経化学), 講師 (90211903)
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キーワード | トランスジェニックマウス / イムノトキシン / 条件的破壊 / 神経変性 / ノルアドレナリンニューロン / 自律神経失調症 / パーキンソン病 / ハンチントン病 |
研究概要 |
(1)DILトランスジェニックマウスを用いたイムノトキシンの投与方法の検討---脳内のノルアドレナリンニューロンにおいてヒトIL-2Rαを発現するDILマウスを利用して、イムノトキシン anti-Tac(Fv)-PE40 の脳室内への投与方法および投与量によって細胞変性の進行に与える影響について解析した。種々の濃度のイムノトキシンを小脳-延髄間の脳室あるいは側脳室へ投与し、2種類の投与方法による細胞変性の度合を比較した結果、投与部位が標的となる神経細胞に近いほど変性の程度を高めることが判明した。また、標的細胞の変性の程度は、投与したイムノトキシンの量に依存し、さらに、少量のイムノトキシンを繰り返し投与した場合には、繰り返しの回数を増やすことによって変性の程度が高まることも明らかとなった。以上の結果から、標的となる細胞の破壊の程度をイムノトキシンの投与方法ならびに投与量を調節することによってコントロールすることができることが示された。DILマウスにおいては、脳内のノルアドレナリンニューロンの他に、末梢器官の交感神経および副腎髄質細胞においてヒトIL-2Rαの発現が観察された。本実験においては、DILマウスの静脈中へanti-Tac(Fv)-PE40を投与し、末梢のカテコールアミン合成細胞を破壊することを試みた。マウス1匹あたり1.5μgのイムノトキシンを投与し、その後3日目に臓器を摘出し、標的細胞の変性について解析した。トランスジェニックマウスにおいて、各種の末梢臓器に投射する交感神経および副腎髄質細胞の変性が誘導され、これらの臓器に含まれるカテコールアミンレベルにも顕著な減少が観察された。イムノトキシンを投与したトランスジェニックマウスは、投与後2目より、体重、運動量、および体温の減少が認められ、また、心電図の解析から心拍数の極度の減少とPQ時間の上昇が観察された。投与後、3日目から4日目に大半のトランスジェニック動物は死亡し、心電図および死後解剖の結果から、動物は心不全により死亡したものと推定された。以上の結果は、末梢のカテコールアミン合成細胞の破壊による自律神経系の機能異常の発症を示しており、この動物は、ヒトの自律神経失調症であるBradbury-Eggleston症候群やShy-Drager症候群のモデルとなる可能性が示唆された。(2)パーキンソン病およびハンチントン病モデル動物の作成---脳内ドーパミンニューロンの条件的破壊を目標として、ヒトTH遺伝子の全体領域を利用し、第一エクソンにヒトIL-2Rα cDNAを挿入した導入用遺伝子を作成し、複数のトランスジェニックマウスを作成した。また、線条体GABAニューロンの条件的破壊を目的として、ドーパミンD2レセプター遺伝子領域にIL-2Rα cDNAを挿入したターゲッティングベクターを作成し、ES細胞に導入し、相同組換え体細胞を単離した。この細胞を用いて注入法によってキメラマウスを作成した。今後、導入遺伝子の発現を解析し、イムノトキシンの投与によって特定細胞の変性を誘導した結果発生する動物の表現型の変化について解析する。
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