動物行動の分子生物学的解析-遺伝的睡眠障害動物作成への挑戦-

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07558108
• 研究種目: 試験研究(B)
• 研究機関: (財)大阪バイオサイエンス研究所
• 研究代表者: 裏出 良博 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 副部長 (10201360)
• 研究分担者: 金岡 禧秀 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究員 (40271514) ; 松村 人志 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 副部長 (50173886) ; 早石 修 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 所長 (40025507)
• キーワード: 睡眠 / 遺伝子ノックアウト / リポカリン / プロスタグランジンD合成酵素 / プロスタグランジン / クモ膜 / 脳脊髄液 / テレメトリー

研究概要

1)ジーンターゲテイング:(i)PGD合成酵素遺伝子ノックアウトマウスの作製は、5種類の独立したES細胞クローンから数匹ずつの雄キメラマウスを得、さらにその中の2種類のES細胞クローンについて雌雄数匹ずつのヘテロマウスの作製に成功し、各ES細胞クローンのヘテロマウスの交配を開始した。(ii)ES細胞内でのCre-loxP組換え法により本酵素の酵素活性部位を欠損したマウスを作成するためには、ES細胞の培養期間がノックアウト法に比較して長期間におよぶ。従ってES細胞の全分化能をいかに保つかが問題である。現在、この点に主眼をおいて研究を継続している。
2)遺伝子発現の組織特異性の解析:本酵素遺伝子の発現は、従来知られていた臓器以外に、眼の網膜色素上皮細胞や、睾丸、妊娠マウスの胎盤等でも活発である事が判明した。又、ヒト本酵素蛋白質に対する複数のモノクローナル抗体を作製し、それらを用いたELISA法を確立した。その測定系を用いてヒト各種体液での本酵素蛋白質の分析を行った結果、精液や妊娠後期の羊水中にその蛋白質が検出された。又、ラット眼房液にも本酵素蛋白質が検出された。今後さらに臨床医学的研究を進める必要性がある。
3)体内埋め込み型脳波筋電位同時測定用2ch無線発振器:重量約3gの試作器を作製し現在その性能試験を行っている。より一層の軽量化のためには電気回路のチップ化を検討する必要がある。
4)第2回国際睡眠学会連合総会(平成7年9月、バハマ)のPGDの睡眠作用に関するシンポジウムにおいて、我々の学説は国際的認知を得、高い評価を受けた。又、分泌型PGD合成酵素(β-trace蛋白質)に関する国際コロキウム(平成7年11月、大阪)を主催し、世界9カ国から当分野の最先端の研究者22名を集め、国際的共同研究およびその研究分担について討論した。

研究成果

• [文献書誌] Marie-Francoise Vesin, et al: "Neuronal and glial prostaglandin Dsynthase isozymes in chick dorsal root ganglia : a light and electron microscopic immunocytochemical study." J. Neurosci.15. 470-476 (1995)
• [文献書誌] Yoshihiro Urade, et al: "Structural and functional significance of cysteine residues of glutathione-independent prostaglandin Dsynthase. Identification of Cys^<65> as an essential thiol." J. Biol. Chem.270. 1422-1428 (1995)
• [文献書誌] Makoto Murakami, et al: "c-Kit ligand mediates increased expression of cytosolic phospholipase A_2, prostaglandin endoperoxide synthase-1, and hematopoietic prostaglandin D_2 synthase and increased IgE-dependent prostaglandin D_2 generation in immature mouse mast cells." J. Biol. Chem.270. 3239-3246 (1995)
• [文献書誌] Yoshihiro Urade, et al: "Recent advances in research on prostaglandin D, E, and F synthases." J. Lipid Mediators Cell Signalling. 12. 257-273 (1995)
• [文献書誌] Makoto. Murakami, et al: "Interleukin-4 suppresses c-Kit ligand-induced expression of cytosolic phospholipase A_2 and prostaglandin endoperoxide synthase-2, and their roles in separate pathways of eicosanoid synthesis in mouse bone marrow-derived mast cells." Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 92. 6107-6111 (1995)
• [文献書誌] Yoshihiro Urade, et al: "Molecular mechanism of sleep regulation by prastaglandin D_2." J. Lipid Mediators Cell Signalling. (in press). (1996)