研究概要 |
当該研究の初年度に当たり,Schistosoma mansoni,Echinococcus multilocularis,Trichinella spiralis,Trypanosoma cruziに対するSCIDマウスの感染動態に検討を加えた。1)S.mansoni : SCIDマウスは本虫に対して,innate resistanceを発現し,虫体の発育ならびに感染虫体回収率が,対照群の正常マウス(CB-17)に比し低かった。この事はT,B細胞の欠如に起因する,虫体側の生存にとって好ましくない機序の存在を示唆している。また,感染SCIDマウスの虫体はプラジカンテルで殺虫されないことが明らかになった。このモデルを用いて本薬剤耐性S.mansoni株の作出を進めている。2)E.multilocularis :駆虫薬の作用効果検討動物モデルとして,SCIDマウスで皮下多包虫症モデルを作出することが出来た。3)T.spiralis :本虫をSCIDマウスに感染させると,排虫は起こらず,しかも,感染SCIDマウスよりの雌虫のin vitroでの産仔数は,感染CB-17マウスのそれと比し有意に多かった。また,感染SCIDマウスをメベンダゾールで駆虫すると,同様に処理した感染CB-17マウスより,多数の成虫,筋肉幼虫が回収された。4)T.cruzi :感染SCIDマウスのparasitaemiaは,感染CB-17のそれに比し著しく高かった。SCIDマウスでの継代は50代を越え,SCIDマウス-T.cruziの感染動物モデルが確立した。 以上のような本年度の研究結果を基に,次年度はそれぞれの寄生虫種の効果的駆虫薬に対する薬剤耐性寄生虫株の作出,選別が可能となった。
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