研究概要 |
当該年度の2年目にあたり、Schistosoma mansoni,Trichinella spiralis,Typanosoma spp.の感染動態と薬剤耐性性状に検討を加えた。1)S.mansoni:a)in vitro解析システム開発のためSCID,BALB/c,ICRマウス、スナネズミを用いて、それらに感染した虫体をin vitro培養し、その産卵がin vivo産卵状況を反映している事が明らかになった。この事により、invitro薬剤耐性解析実験系の作出が可能であることが示唆された。b)プラジカンテル(PZQ)で駆虫したS.mamsoni感染SCIDよりの虫卵から得たミラシジュウムを中間宿主貝で継代したところ、圧倒的に雄虫体が多い系統が出現した。この事はPZQが、虫卵のステージで選択的に雌性ミラシジュウムを殺虫している可能性や、あるいは、その後に同虫の発育に何らかの傷害を及ぼしていることが考えられた。c)弱毒化セルカリアで免疫したマウス中での攻撃感染虫体の産卵が宿主免疫状態によって、一般的にも影響が及ぶことが示された。このことは、薬剤耐性性状の発現の一要因として考慮しておく必要がある。2)T.spiralis:メベンダゾールで駆虫処理を施した施毛虫感染SCIDからの虫体を継代する事により、薬剤耐性性状を有した株が作出された。しかし、この性状は宿主を変えることにより,減弱あるいは消失した。3)Trypanosoma spp:T.cruzi感染をSCIDモデルの確立に加え、さらにハントウアカネズミ、セスジアカネズミより分離したTrypanosoma sp.をSCIDで継代を試み、分離株を確立出来なかったが、スナネズミでは成功した。この種を用いて安全なTrypanosoma薬剤耐性機序の解析システムを検討している。 以上のような本年度の研究結果を基に、次年度は、さらに寄生虫種を限定し、薬剤耐性機序の解析を行いたい。
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