近年、遺伝子導入・欠損マウスを作製し、個体レベルにおける遺伝子機能の解析が盛んにおこなわれるようになった。高次の遺伝子機能の解析のために、多くの遺伝子導入・欠損マウスが必要とされ、場合によっては、さらにこれらを掛け合わせて解析することも必要である。これらのマウスの繁殖(交配、妊娠、出産、離乳等)や各個体の所見・解析データは膨大となり、従来行っていたノート等を用いた手作業では不可能である。そこで我々は、遺伝子導入・欠損マウスの作製から系統維持管理、データ検索、さらに解析終了後の卵・精子の凍結保存・再系統化までを一括して入力・整理できる対応範囲の広い新たな管理システムを開発した。 このシステムでは遺伝子導入・欠損マウスの作製に伴う様々な情報を種動物導入、交配、妊娠確認、離乳、動物供給(分与)、凍結保存、データ解析に区分し、コンピューター(PC-98系、C言語)上で統合して管理することにした。入力したデータの整合性をシステムがチェックし、入力作業は簡便化し、誤入力も防ぐことができ、入力データから系統維持台帳、妊娠分巣ケージリスト、繁殖成績リスト、遺伝子別個体情報リスト、系統図の帳票出力が可能、さらに凍結保存卵・精子の管理、液体窒素タンクの在庫・収容管理まで対応できるシステムを開発した。本システムはパソコン上で稼働するため、広範囲におよぶデータの管理が容易となり作業効率が大幅に向上するだけでなく、ネットワークとの対応によりデータベースの共同管理・利用ができ、発生工学研究全体の標準化と効率化に大きく寄与することが期待される。
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