研究概要 |
1,本補助によって購入した万能試験機に特性の把持装置を取り付け、恒温水槽中で引っ張り試験ができるように改良した。さらに変位および断面積はvideo dimension analyzerを用いて非接触で測定できるようにし、計測システムを完成させた。非接触測定によって計測された腱・靱帯組織の断面積は、従来の接触型測定法と比べて約20%大きな値を示すことがわかった。 2,人工材料としてポリエステル製平織りメッシュおよびテフデックおよびタイクロン糸(No2および5)を用い、これらと各種生物学的材料(ヒトおよび豚の膝蓋腱、屈筋腱)との最強の直列結合の方法について調べた。調べた結合方法は5通りである。その結果、屈筋腱2本をループにして重ね合わせ、その中をメッシュを通して縫合するα型結合方法が約900Nの最大荷重を有し、最強であることがわかった。 3,人工材料(PDSおよびバイクリル糸)を家兎の膝関節に移植し、関節内、骨内、関節外筋層下の3つの異なる環境下における引っ張り強度およびstiffnessの経時的劣化の差を移植後3および6週において調べた。その結果は、骨内の劣化が他よりも有意に大きく、今後の移植試験は、この部位を重視する必要性が示された。 4,体重約10kgのビ-グル犬および体重約100kgの豚の前十字靱帯、膝蓋腱、屈筋腱の材料強度を上述の測定装置を用いて測定し比較した。全体が軟組織である屈筋腱の引っ張り試験を行うために、両端を凍結させて把持する凍結式把持装置を開発した。その結果、屈筋腱の引っ張り強度が約100MPaと最大であった。tangent modulusは膝蓋腱のそれよりも低かった。屈筋腱は強靱でかつ伸展性に富む興味深い生体材料であることが示された。
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