研究概要 |
1.ビ-グル成犬28頭を用いた.両膝関節のACLを切除した後,右膝には膝蓋腱(BTB)と人工繊維の結合材料を用いて,左膝には屈筋腱と人工繊維の結合材料を用いてACLを再建した.術後3週および6週に各14頭ずつ屠殺し,そのうち4頭を組織学的観察に,10頭を引っ張り破壊試験による力学特性の評価に供した. (1)組織学的には、BTBでは術後6週で移植骨片は骨孔壁と骨性に癒合した.屈筋腱では術後6週で間隙は線維性結合組織とそれに結合するSharpey線維様コラーゲン線維、および軟骨で埋められていた.さらに一部には結合組織を介さずに腱と骨孔壁とを直接結合するSharpey線維様コラーゲン線維を認めた.骨孔内のポリエステル繊維には変化は認めなかった. (2)力学的試験では,最大破断荷重に関してはいずれの移植腱においても経時的な有意の増加を認め,いずれの時期においても両移植腱間に有意差を認めなかった. 2.これまでの基礎的研究に基づいて,臨床使用が可能な人工高分子繊維(ポリエステル)と生体由来膠原線維束を直列に結合した高靱性ハイブリッド型人工靱帯を開発した. 3.2種のハイブリッド人工靱帯AおよびBを実際の臨床に使用し,客観的評価を加えた.症例は110例(男70,女39である.経過観察期間は平均1年3カ月であった.大腿骨側の固定に関して,ハイブリッド人工靱帯A群ではstaplingを,ハイブリッド人工靱帯B群ではEndobuttonを用いた.その結果,両群とも合併症は皆無であった.脛骨前方移動距離の対健側差を3mm以下の症例は,A群で39人(71%)B群では40人(73%であり,両群間に有意差を認めなかった.
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