本研究は、細胞内イオン動態の測定法として、時間分解能に優れた蛍光色素を用いた手法を取り上げ、これを摘出灌流心標本に適用する際にこれまで問題となていた点を解決し、より精度の高い計測の行えるシステムを開発せんとするものである。平成7年度においては、蛍光色素の摘出灌流心標本への導入系の確立を行った。 1.微小電極製作器等を購入し、蛍光色素注入用の微小電極の最適化を試みた。これは、最も安定して色素注入が行える微小電極の大きさ、ならびに、その作製条件の検討である。 2.通電誘導可能な微小電極用増幅器等を購入し、蛍光色素注入プロセスの最適化を試みつつある。色素注入を行うに際し必要な心拍動の停止法、電極刺入の方向などの条件、電極の保持法、色素注入のための電流の最適設定などが今後の課題である。 今年度は、主に、ハードウェアの設立に費やした。次年度においては、本手法を確立するため、以下に重点を置いた検討を行う予定である。 1.蛍光色素注入量と感度との関係の検討:注入量とそのために要する時間とは比例すると予想される。効率よく計測を行うために、必要にしてかつ十分な感度が得られる注入量を決定する。 2.フォトマルチプライヤーによる測定系の最適化:バックグランドが変化しない実験条件では、時間分解能のよいフォトマルチプライヤーによる計測が有用である。この測定系の最適測定条件を求める。 3.画像処理プログラムの開発:バックグランドが変化する実験条件では、画像処理による計測が必要となる。このための処理プログラムを開発・整備する。
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