研究課題
基盤研究(A)
通常、年齢とともに筋力の減少や筋萎縮が生じる。これは、中高年者における歩行能力の低下によると考えられる。しかしながら、加齢に伴う体力低下が歩行能力に反映する、あるいは逆に歩行能力の低下が運動不足を引き起こし高齢者の体力低下に結びつく、という「体力と歩行能力の因果関係」(金子1995)は、明らかになっているわけではない。本研究の目的は、中高年者男女を対象に体幹と下肢のレジスタンストレーニングを行った場合の筋力増加と歩行動作の変化の対応を検討することである。9名の中高年者(男子4名、女子5名、平均47歳)が本実験に参加し、12週間の脚筋のレジスタンストレーニングを行った。トレーニング前後に、Cybex machineによる等尺性膝伸展・屈曲筋力と、ビデオ撮影(60fps)による矢状面の歩行動作の変化を検討した。歩行動作については支持脚接地点(HC)・中間点(MID)・離地点(TTO)における股・膝・足関節の角度に注目した。トレーニングによって、膝伸展筋力が有意に増大した(17%)が、中高年者の歩行において、脚伸展筋力が増大したからといって自由歩行における歩行速度が増加し、ストライドが伸び、ピッチが速まるということはなかった。ただし、歩行動作それ自体をみると、トレーニングで膝伸展筋力が増すことによって、歩行の両足接地期(TTOとHC)において股関節はあまり開かずに、脚接地時と踏み出し時の膝関節がより伸展するという変化が認められた。したがって、「脚のレジスタンストレーニングで筋力が増大すれば、膝がしっかり伸びる歩行動作となる可能性」が本研究により示唆された。さらに、本研究では、筋力トレーニングについての特徴についての基礎実験を行い、中高年者のトレーニングの可能性について言及した。
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