平成7年度は、運動・栄養要求能力の研究に適した実験動物作成のために次の実験を行ってきた。外来ミトコンドリアの導入を初期胚への細胞質導入・細胞融合・核移植の3方法を用いて行っているが、いずれの方法においても、出産可能の指標となる胚盤胞まで発生が確認されている。また、それら発生工学の手法により導入された外来ミトコンドリアの存在が、PCR法にて胚盤胞で確認することができた。現在は、その外来ミトコンドリアを導入した初期胚が胎児そして新生児へと発生・分化できる条件を検討かつ実験をし、新たな運動・栄養要求能力の研究に適した実験動物を作成中である。さらに、市販近交系、野性種由来近交系および戻し交配で得られたミトコンドリア置換の3タイプのマウスの運動能力・成長速度および骨格筋(ヒラメや腓腹筋等)の解析を行った。運動能力は、戻し交配で得られたミトコンドリア置換の近交系マウスにおいて元の市販近交系マウスに比べ激運動時の限界走行時間で低下を示した。また、野性種由来の近交系マウスは、市販近交系マウスより優れた運動能力を示した。自発運動量では、野生種由来の近交系マウスが若齢から既に市販近交系マウスの倍以上の滑動量を示した。成長速度は、野性種由来の近交系マウスは体重がピークに達するのが速くかつ小型であった。野性種由来のミトコンドリアに戻し交配で置換された近交系マウスは元の市販近交系マウスと異なる成長曲線を示し、成熟マウス(20週齢前後)で10%程度の体重差を認めている。骨格筋の解析は、現在、市販近交系および野性種由来近交系マウスの解析を終え、野性種由来の近交系マウスで市販近交系マウスに比べタイプIIである遅筋の割合が高いことを確認している。また、マウスは一般にヒラメ筋で速筋の比率が遅筋に比べ高いとされているが、一野性種由来近交系マウスにその割合が逆転しているものを認めた。
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