研究概要 |
英文科学技術文理解の第1投階として,第1階述語論理式の述語記号に動詞を,項に名詞句をそのまま充てる方式が考えられる.この変換のためには,(1)動詞句の構造決定,(2)名詞句の範囲決定,の二つが必要となる.前年度までの研究で,文の主動詞を97%の確度で一意的に正しく決定する手続きを開発している.また,名詞句の核となる被修飾名詞の98%を決定する手続きを開発している.今年度は,これらの成果をもとに,(1)(2)の問題に取り組んだ. (1)において問題となるのは,compare A with Bのように,動詞と前置詞がパターンをなす場合の判定である.すなわち,後方にwithを伴ったcompareの生起がすべてパターンをなしているとは限らない.そこで,市販辞書から得たパターン294について,単語列としての生起回数を求め,頼度の高いものを人手で調査した. パターンcompare A with Bにおいては,AとBという名詞句が「比較可能」であることが本質であろう.そこで,A,Bの名詞句の核となる被修飾名詞の対を抽出し,既存のオントロジーと照合した.その結果,75%程度については共通の上位概念をもつことがわかった.共通の上位概念をもつ2概念はその意味で「似て」おり,「比較可能」であると考えられる. (2)に関しては,まず被修飾名詞とその前方修飾語のみからなる名詞句を単純名詞句と定義し,その範囲決定のために,前方修飾語の決定法を開発した.この方法は,語が直前に定冠詞を伴う相対頻度を前方修飾度と定義し,ある閾値より高い値をもつものを前方修飾語とする手続きである.この決定手続きにより,前方修飾語の98%を決定することができる.
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