本研究では、日本周辺の地震について長周期地震波形データを自動的に解析するシステムを構築し、地震発生後30分以内に地震の大きさとメカニズムを決定し公表できるようになることを目指していた。 グローバルな地震についてはすでに方法は確立し、地震発生から3〜6時間くらいの間に地震の大きさとメカニズムを自動的に決定し世界の研究者に情報を流している。この方法について、解析の手順・解の統計的性質などについてまとめ論文として公表した。同様の方法を日本周辺の地震について応用し、地震発生後30分程度で同様の解析が自動的に出来るようなシステムを構築した。この方法で得られた解を、気象庁が地震波の初動の押し引きのデータから決めたものと比較したところ、現在の方法はマグニチュウド5.5以上のものには十分に応用できることが分かった。またこの比較から、両者の解が一致しないときは、マグニチュウド5.5以上のものについては、気象庁の解に問題があることもわかった。このような解析からえられる地震の大きさは、気象庁が短周期地震波の振幅から決めているマグニチュウドなどと比べて、地震の物理的大きさをより正確に反映していると考えられる。今までの解析から、気象庁のマグニチュウドは多少過大評価の傾向があることも明らかになった。 マグニチュウド4程度のの小さな地震についても新たな方法を開発し、関東地方の地震について実験的に応用した。地震研究所および防災科学技術研究所が関東地方周辺に設置している20程の広帯域地震計の記録をほぼリアルタイムで収集するシステムと併せて、関東周辺の地震のCMT(セントロイド・モーメント・テンソル)を地震発生後20分程度で自動で決定するシステムを構築し、実験的にルーチン自動解析を行っている。既存の観測点配置・データの質の制約を考慮しても、マグニチュウド4.0までの地震なら信頼できる解が得られることがわかった。 本研究の延長としては、衛星回線の使用などにより広帯域地震計のデータがリアルタイムで収集することが出来るようになれば、長周期波形を使ってリアルタイムで日本列島の地震活動場をモニターするシステムを構築できることが示された。
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