平成7年度は研究の初年度にあたり、まず二塔式実験装置を製作し、水素と重水素を用いて、全環流条件で同位体分離実験と解析をおこなった。パラジウム1塔を用いた置換クロマトグラフィから、重水素の100%までの濃縮が可能であることを示し、本研究で提案する分離の可能性と有効性を明らかにした。次に同位体交換実験から、パラジウムの同位体交換速度が低温側でβ相拡散律速、高温側で細孔内拡散律速、LaNi_<5-X>Al_XではNi表面における同位体交換反応律速である事を確認した。またそれぞれ求めた分離係数は過去の結果と一致した。さらに二塔式分離装置を用いた水素・重水素の同位体分離実験をおこない、充填材料であるパラジウムとLaNi_<5-X>Al_Xが当初の期待通り、それぞれ順方向と逆方向の同位体効果を発揮し、効果的な濃縮塔と減損塔を構成することを明らかにした。さらに同位体分離塔のHETPが、パラジウムとLaNi_<5-X>Al_Xとも0.7cm程度であることも求めた。次いで、二塔式分離プロセスの原理、操作手順を段モデルを用いて数値解析し、例えば、等価段が100段の二塔式分離システムで100回程度の吸蔵と脱離の繰り返しで定常状態になり、以後、濃縮塔と減損塔の両端から連続分離可能であることがわかった。 これらの結果の大部を、"トリチウムの核融合、核分裂、同位体利用の国際会議"と"日韓水素エネルギのジョイントシンポジウム"で発表し、Fusion Technologyに論文発表した。同位体交換の詳しい結果は、外国雑誌のJournal of Nuclear Materialsに、置換クロマトグラフィの実験結果は原子力学会の欧文誌に発表した。
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