平成8年度は、本研究の最終年度であり、前年度に引き続き、二塔式充填層水素同位体分離実験と解析計算をおこなった。特に本年度に明らかにした結果は次の通りである。 (1)二塔式分離装置の有効性は初年度に明らかにできたが、本年度は二塔式装置を順方向と逆方向に随時流れが逆転できるように変更し、吸蔵後の脱離過程として順洗浄パ-ジと逆洗浄パ-ジの両者を試し、逆洗浄パ-ジが優れているとの知見を得た。 (2)Pd充填層(濃縮塔)において重水素濃度にかかわらず、二つの交換反応が平行して起こっていることを、塔内の実験濃度変化と解析計算の比較から明らかにした。 (3)Zr(Mn_<0.5>Fe_<0.5>)_2合金の水素と重水素の同位体効果と吸蔵速度を調べ、常温付近でこの合金が重水素に高いアフィニティをもつことを明らかにし、減損塔用の不純物に強い候補材として有望であることを見いだした。 (4)水素吸蔵合金へのトリチウムの吸蔵と脱離実験をおこない、電離箱による計測システムを完成させ、水素とトリチウムの同時通過実験を可能にできた。 以上の結果を、日本原子力学会秋の大会(平成8年9月)、水素エネルギシステム研究に、平成9年4月、東京でおこなわれる核融合工学の国際シンポジウムで発表する。また二年度にわたる研究をまとめ、研究成果報告書を上・下巻(合わせて413ページ)に分けて書き上げた。
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