今年度は、まず、DNAのピリミジンダイマーをAlkaline Unidirectional Pulse-Field Electrophoresis法によって定量する高分子DNA傷害解析システムを開発した。この装置は、蛍光検出部、サンプルステージ部、ファイバー光学部、データー処理部から構成される。検出方式としては蛍光を利用することにし、測定方法は透過および反射の二つの方法が可能であるようにした。すなわち、電気泳動終了後、エチジンブロマイドで染色、脱色した試料をプレート上にのせ、スキャンニングしながら透過(あるいは反射)蛍光強度を測定する。分子量マーカーの蛍光強度と移動度からスタンダードカーブを作製する。次に、試料の移動量と蛍光強度を測定し、スタンダードカーブから平均分子量を求め、Mb当たりのDNA損傷量を算出する。この装置の性能についてλDNAおよびイネ葉を材料に検査したところ、1Mbあたり一個のピリミジンダイマーを検出出来ること、30-50ngのDNA量で測定出来ることが判った。また、さらにλDNAを用い、紫外線照射量とピリミジンダイマーの生成量との関係(UV Dose-Response Curve)を調べたところ、ブンゼンロスコ-の法則が成立することが判った。一方、研究分担者である日出間は約2カ月、米国Brookhaven研究所のSutherland夫妻の研究室に出かけ、同様の測定装置を用いて予備試験を行った。その結果、日本水稲のうち強い紫外線抵抗性を有するササニシキおよび弱い抵抗性を示す農林1号の幼植物におけるUVB(302nm)照射によるピリミジンダイマーの生成と光回復に関して一定の成果をあげ(論文作製中)、品種間差異の一要因となっている可能性を見出してきた。本研究で試作した装置を用いても同様の結果を見出しており、今後の研究の成算の裏付けを得ることができた。
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