研究概要 |
我々はPBS中に溶解したDNA,またはニトロセルロースフィルター上に固相吸着させたDNA中に太陽光紫外線によって誘発される損傷を定量的に検出し、これらを太陽光中の有害紫外線量を測定する系として開発することを試みた。測定には損傷特異的抗体TDM-2を用い、2次抗体に標識された酵素と基質の発色反応によって紫外線線量を定量化した。種々の実験条件を検討し,太陽光シミュレーターを用いて照射実験を行ったところ、UVA領域紫外線量が300kJ/m^2までは線量と発色に直線関係が認められる系の確立に成功した。この2種類の測定系を用い,沖縄気象台屋上での太陽光線量の測定実験を行った。同時に英弘精機のUVモニターMS-210I,UV-103(英国Macam社)、超小型マルチチャンネル測定装置(米国Ocean Optics社)を用いて紫外線量を測定した。我々の確立した系で得られた測定値は,累積線量を測定できるUVモニターMI-340の測定数値と良い相関を示した。この結果から我々の測定系の有用性が証明されたと考えられる。しかし,雨,風などの自然条件に対処できない、総線量が高い場合に発色の直線性を越える場合もあり得る、氷浴の確保に労力をさく必要があるなどの問題点も明らかとなった。今後はDNAを吸着させたニトロセルロースフィルターをフィルムで密閉した系を開発していく予定である。さらに、シリカゲルなどの乾燥剤による湿度調節の検討。紫外線をカットするフィルムによる被曝線量の最適化、温度差による損傷の生成動態の違いを明らかにしていくことなどによって、より感度の優れた簡便な線量計の確立を試みていく予定である。
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