研究概要 |
本研究では、海綿Theonella sp.より分離したマクロリド、テオネゾリドAならびに過鞭毛藻Amphidinium sp.由来のマクロリド、アンフィジノリド類を対象として、各々に含まれる不斉炭素の立体化学の解明に関する研究を以下の通り行った。 テオネゾリドAのC-4〜C-17フラグメントに関して、昨年度までの研究により、このフラグメントにふくまれる2組の1,3ージオールはいずれもsyn配置であることがモデル化合物の合成とスペクトルデータにより推定された。本年度はこの結果に基づき、本フラグメントの立体異性体の合成研究を行い、2種のジアステレオマ-(2組の1,3ーsyn-ジオール同士がsyn配置のもの)の合成を完了した。そのうちの一つが天然物由来フラグメントとそのスペクトルデータ及び比旋光度の値が一致したため、本フラグメントに含まれる4個の不斉炭素の絶対立体配置を8S,10R,14S,16Sと決定した。一方、アンフィジノリドCに関して、昨年度までの研究により、C-1〜C-9フラグメントの推定される相対立体配置をもつ1つのジアステレオマ-の合成を行った。本年度はアンフィジノリドCの化学分解反応を行うために十分な量の天然物を蓄積することを目的に、過鞭毛藻Amphidinium sp.の大量培養と藻体の抽出物からのマクロリド類の分離・精製を引き続き行った。その過程で、2種の新規マクロリド、アンフィジノリドRとSを単離し、スペクトルデータによりその構造解析を行った。これらは、先に分離したアンフィジノリドJの類縁化合物であったため、化学誘導反応に基づくアンフィジノリドJとの関連づけを行い、その全絶対立体配置を明かにした。
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