食用作物にストレスを与え、誘導されるストレス化合物を調査した。キク科野菜ヤ-コンから、病原菌処理により誘導された3種の抗菌性物質を単離し、アセトフェノンおよびベンゾフラン構造を持つことを明らかとした。また、アブラナ科に属するセイヨウワサビに紫外線を照射することにより、スピロブラシニンとともに新規の含硫インドール系抗菌性物質を単離した。さらに、サトイモ科に属するコンニャクの球茎に病原菌を接種し、正常組織に検出されない抗菌性物質の産生を認めた。 生薬として利用されている薬用植物50種以上にストレスを与えた結果、ハマボウフウ根、ダイオウ葉、シャクヤク根等に正常組織には見られない新たな成分の生成を認めた。 ハマボウフウの根から3種類のストレス化合物を単離し、フロクマリンに分類されるプソラレン、キサントトキシン、ベルガプテンと同定した。これら化合物は、生薬浜防風の成分として報告されている。ハマボウフウの根にストレスを加え、経時的に成分を分析したところ、これらのフロクマリンは無処理の根には痕跡程度しか検出されず、ストレスを加えたことにより誘導されたことが判明した。一般に、採取した薬用植物は陽干しあるいは陰干しして生薬に調製される。ハマボウフウで得られた知見は、これまでに報告されている生薬成分が薬用植物本来の成分ではなく、生薬調製の過程で新たに誘導された可能性が無視できないことを示し、生薬研究に新しい視点を提供することとなった。 ストレスを与えたことにより植物組織に産生する抗菌性化合物をTLCバイオアッセイで検出するとともに、購入した低圧グラジエント装置を利用して抽出物のHPLC 分析を行った。処理組織からの抽出物を正常組織からの抽出物と比較することにより、産生したストレス化合物によるピークが検出可能となり、研究の効率向上に役立った。
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