研究概要 |
新しい医薬の原型となりうる化合物を求めて、抗菌活性を指標として食用作物と薬用植物のストレス化合物を探索した。食用作物サトイモ科コンニャクの塊茎スライスに硫酸銅溶液を塗布し、PAF受容体拮抗物質として報告されているyangambin、およびsesarteminをストレス化合物として単離、同定した。また、同科に属するサトイモの塊茎スライスから、ストレスにより誘導された新規化合物を単離し、2,6-二置換piperidin-3-ol構造を持つことを明らかとした。さらに、アブラナ科に属するセイヨウワサビの根茎スライスにレタス腐敗病菌を接種し、誘導された新規非インドール系ストレス化合物を単離し、構造を明らかとした。 薬用植物であるニガキ科ニガキの葉から2種のアルカロイドをストレス化合物として単離し、canthin-6-oneおよびmethylnigakinoneと同定した。未利用部位にストレスを加えることにより、ニガキの薬効成分を誘導できたことは、薬用植物の未利用部位がストレス負荷によって有効活用できることを示唆する。同じニガキ科のシンジュ枝皮層部にクワ芽枯れ病菌を接種し、canthin-6-oneとともにcanthin-6-one-3-N-oxideをストレス化合物として単離し、同定した。 鳥取県産のハマボウフウから種々の乾燥条件で生薬浜防風を調製し、そのエキスについて薬理活性を調べたところ明確な違いがみられ、その違いはストレス化合物として誘導されたフロクマリン含量と相関を示した。薬用植物収獲後の乾燥処理法の違いが、生薬の薬効にまで影響を及ぼすという生薬生産において重要な概念が得られた。
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