研究概要 |
HR1Bと同様、蛇毒由来のメタルプロテアーゼであるEcarinについてその全cDNAを決定した。Ecarinは、約20残基の疎水的なシグナル配列を有し、全体で616残基のアミノ酸をコードしていることが判明した。精製Ecarinのアミノ末端配列は191番目からの配列に一致することから、Ecarinは、約170残基のプロシークエンスを持った形で生合成され、翻訳後にプロシクエンスは除かれるものと推測される。そこで、matureなEcarinは426残基からなり、17%の糖鎖が結合していることを考慮すると、分子量は、57,700となり、SDS-PAGEもとめた56,000の値に良く一致した。Ecarinと出血因子HR1BやRVV-Xとのホモロジーを調べると、プロシークエンス間のホモロジーが80%前後と最も高く、メタロプロテアーゼドメインは43-54%と低い。Disintegrinドメインでは、RVV-Xとの相同性が他のタンパク質に比べて82%と非常に高くなっているのが注目される。ホモロジーの高いプロシークエンスは、メタルプロテアーゼの活性化において重要な働きをしていることが推測されている。最近、新たにEcarinとホモロジーをしめすタンパク質(Cyritestin)が見出された。Cyritestinは、マウスのtestisに特異的に発現しておりCys-richな膜結合タンパク質と考えられる。両者のCysの位置とその周辺は非常に良く一致している。今後、機能的に全く関係のなさそうに思えるこれらタンパク質分子間のDisintegrinドメインの配列を詳しく比較することで、HR1Bの抗血栓活性に必須な領域が明確になると考えられる。
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