研究概要 |
HRIBと同様、蛇毒由来のメラルプロテアーゼであるEcarinについてその全cDNAを決定した。Ecarinは、約20残基の疎水的なシグナル配列を有し、全体で616残基のアミノ酸をコードしていることが判明した。精製Ecarinのアミノ末端配列は191番目からの配列に一致することから、Ecarinは、約170残基のプロシークエンスを持った形で生合成され、翻訳後にプロシクエンスは除かれるものと推測される。そこで、matureなEcarinは426残基からなり、17%の糖鎖が結合していることを考慮すると、分子量は、57,700となり、SDS-PAGEからもとめた56,000の値に良く一致した。Ecarinのドメイン構造を調べると、アミノ末端から約200残基のメタルプロテアーゼドメイン(191-397)、約100残基のdisintegrinドメイン(398-490)、約130残基のCys-rich(491-616)ドメインから成っており、そのパターンは、ハブの強力な出血因子であるHRIBとまったく同様のドメイン構造をしていた。このCys-richドメインやdisintegrinドメインが、PH30と呼ばれるタンパク質にも存在していることが判明した。PH30は精子の表面にある膜タンパク質で卵と精子との融合、すなわちFusionに関与している。したがって、Ecarinのdisintegrinあるいは、Cys-richドメインがプロスロンビンの認識に関与している可能性がある。さらに、Tumor-necrosis factor-α (TNF-α)の前駆体から成熟TNF-αに変換するプロテアーゼに同様のdisintegrinドメインをもつメタルプロテアーゼが発見され、今後、機能的に全く関係のなさそうに思えるこれらタンパク質分子間のdisintegrinドメインの配列を詳しく比較することで、抗血栓活性に必須な領域が明確になると考えられる。
|