研究概要 |
アミノ基転移酵素の特異な基質特異性を解析するために,新たな方法論の開発が必要となった。そのために,キメラ酵素作製法の蛋白質工学への適用範囲の検討を行った。 キメラ酵素を作製する方法には,大別して3つある。「制限酵素法」は共通の制限酵素部位を必要とし,「PCR法」はキメラ毎にプライマーDNAを合成する必要があるのでコストがかかる。しかし,「相同的組換え法によるキメラ作製法」は,制限酵素部位やプライマーDNAを必要とせずに,一連のキメラ遺伝子を作製できる。この方法を利用すれば,全体の塩基配列の相同性が50%以下でも,部分的に相同性の高い箇所(10塩基中8塩基以上の相同性)があれば,キメラ遺伝子の得られることが,部位特異的変異法によってDNAの相同性を部分的に変化させた実験より,明らかになった。 また,この「相同的組換え法によるキメラ作製法」利用して,制限酵素やPCR法を用いること無く,2つの遺伝子を連結する方法の開発が可能となった。 さらに,このようにして得られたアスパラギン酸アミノ基転移酵素と芳香族アミノ酸アミノ基転移酵素のキメラ酵素から,両酵素は酸性基質用と疎水性基質用の2つの基質結合ポケットを持ち、基質によって2つのポケットを使い分けていることが明らかになった(但し,触媒基は共有)。また,疎水性基質認識には蛋白質の揺らぎが大きな役割を担っていることも明らかになった。
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