近視野顕微鏡と原子間顕微鏡を一体化した、走査型近視野原子間力顕微鏡を用いて研究を行った。世界的に難しいとされている、蛍光近視野解析を用いて生物的に重要性のある結果を得ることに成功した。 低密度リポ蛋白質LDLは細胞内エンドソームに取り込まれて、基質コレステロールを輸送する。これは情報ステロイド合成の重要なステップである。Dil-LDLを副腎皮質細胞に加えて、細胞膜直下での初期エンドソーム(LDLを含む小胞体)を近視野蛍光像として世界で始めて捉えることに成功した。共焦点顕微鏡で観察した直径1μm程度の中期エンドソームと異なり、近視野蛍光像で捉えたのは細胞膜直下の初期エンドソームで、直径は200nm程度であった。 コレステロールは次にミトコンドリアに運ばれて情報ステロイドに変換される。単離ミトコンドリアをカバーグラス上に貼り付けたものを用いて、ミトコンドリアの重要な活性を蛍光近視野観察出来た。cholesterol-resorufinは副腎皮質ミトコンドリア中のチトクロムP450sccで代謝され情報ステロイドであるpregnenoloneと蛍光性resorufinになる。このresorufinの蛍光を測定することで副腎皮質ステロイドホルモン合成の第一段階の酵素活性を可視化することができる。resorufin代謝を行ったミトコンドリア数は原子間力顕微鏡で観察できるミトコンドリア数の1/3程度であった。
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